初詣の仕度 あい整いました生田神社
山門前の杉盛り

2013.12.28

年の瀬28日、獣医師会最後の会議が神戸の生田神社境内にある神社会館でありました。山門前の正月飾りの「杉盛り」です。その昔、社殿を取り囲んでいた松の木が、雨によって倒れ込み社殿が倒壊したという伝承から、松を忌み嫌うようになったということです。そのため境内には1本の松の木もなく、新年を迎える門松、松飾の代わりに杉盛りを飾ります。大きな午の絵馬が飾られ、初詣の準備が整った境内は盛り場の喧騒を感じない静けさを保っていました。カメラを構えている皆様、私以外は全員外国語をお話しでした。

ササユリの実生苗は気の長い人向き
葉が展開するまでに3年、開花まで8年!

2013.09.25

Wikipediaから引用

秋に実ったササユリのさく果は乾燥して哆開すると、中にぎっしり詰まった種子は木枯らしに運ばれて播種されます。翌年の夏の暑さに30日以上耐えた後、その年の秋に地下でようやく芽を出します。その後、冬の寒さに20日以上あたらないと地上に葉を展開しません。オニユリは翌春直ちに発芽するのに対し、ササユリは翌々春でないと発芽しないというわけです。そして発芽した小さな苗から初めて花をつけるまで最低5年。首の長い人向きの山野草ですね。篠山にお住まいの患者さん宅裏山に自生していたササユリの種子をいただきました。私の喜寿に開花してくれれば最高。
古くからササユリの強い芳香は人の病を治し、疫病を防ぐ力があると信じられてきました。「ササユリ」はユリの中でも薬用として高品位であると評価されています。百合根が適応となる病気は中医で百合病と呼ばれています。百合病は精神がぼんやりして、飲食行動が常態を失った病証で西洋医学では「うつ病」に相当するものと考えられているそうです。アロマセラピーですね。
ところで各種ユリは猫に強い毒性を示します。ユリ根から葉、茎、花、花粉や活けていた花瓶の水まで毒性があると言われています。中毒症状が出た場合、殆ど救命できませんのでご注意ください。

国により、感性の違いがここまで違うとは
日本でマイナーイメージでもお隣韓国ではロマンチック

2013.09.25

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ヒガンバナが満開です。墓地などでよく見かける彼岸花はその植物体全体にアルカロイドを含む有毒植物です。鱗茎にはデンプンを蓄えていますが同時にリコリンという毒素を含んでいます。この毒素は水溶性で何回か水にさらすことにより無毒化することができるので昔の人はこの球根の部分からデンプンをとって、飢饉の際の食料いわゆる救荒食物としたそうです。別名の曼珠沙華は、法華経などの仏典に由来し、"天上の花"という意味。仏教の経典には おめでたい事が起こる兆しに、赤い花が天からふってくると記載されているそうです。しかし日本では逆に忌み嫌う異名がやたらに多く、死人花(しにびとばな)、地獄花、幽霊花、剃刀花(かみそりばな)、狐花(きつねばな)、捨子花(すてごばな)など様々です。さらに花の形が燃え盛る炎のように見えることから、家に持ち帰ると火事になるとか、さんざんな迷信もあり、少しお気の毒です。花期の後で葉が伸びてきますが、冬と春を越して夏近くなると葉は全く消えてしまいます。秋の彼岸前から急速に花茎だけを伸ばし開花します。したがって花と葉を同時に見ることはできません。葉のあるときには花はなく、 花のときには葉がないわけで、「花は葉を思い、葉は花を思う」という意味から韓国ではロマンチックに「サンチョ(相思華)」と呼ばれています。同じ花でも見る人の感性、国民性でこれほど評価が変わってくるのですね。

裏御光・・雲の影が雲に投影されて
日没の瞬間、ディズニーのファンタジアを彷彿とさせる情景

2013.08.31

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ここ数日、急に空が高くなりました。夕焼けに染まる西の空、一握のちぎれ雲がより高層にある雲の下面に長い影を投影しています。雲の切れ間あるいは端から光が漏れ、光線の柱が放射状に地上へ降り注いで見える現象は薄明光線または光芒、俗に「天使のはしご」と呼ばれ、非日常的な雰囲気を持ち、神々しさを感じさせるためか宗教画にしばしば描かれてきました。この写真はその逆で暗い影を投影しており、反薄明光線、俗に「裏御光」と呼ばれているようです。いずれも美しい自然現象として、写真愛好家にとり人気の高い被写体のひとつです。しばらく見とれていましたが、ウォルト・ディズニーの古い作品「ファンタジア」の一場面、紫色のマントで大空を覆って夜の帳(とばり)を降ろす夜の女神をふと思い出しました。

頭ガンガンするんで診てください
ウチのひと、帽子もかぶらず高校野球観戦してたらしいのよ!
熱中症よ、きっと!あっ、診察券もってくるの忘れましたぁ

2013.08.15

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・・・と言っているかどうかはわかりませんが、この夏の猛暑は記録的です。熱闘が繰り広げられている甲子園球場は連日35℃以上が続いているようです。今春から、熱中症と診断されたワンちゃんは2頭、ネコさんは1頭です。この暑さにもかかわらず意外に少ない感触を受けます。それだけ飼い主さんも意識が高くなってきたのでしょう。
熱中症を一言で言えば、体温調整の制御がきかなくなって上がり過ぎ、身体の機能に異常をきたした状態です。熱中症では体内に熱が溜まるので、体外に熱を排出しようとする機能と血管収縮によるその封じ込めで寒気が出る、ということですが、実は熱中症にはもうひとつの重大な症状があります。それは、熱中症の影響で神経系がおかしくなり、これは脳にも及びます。熱中症のために呼吸困難になったり意識を喪失したりするのは、中枢神経系の異常によるものです。呼吸や意識だけではなく、温度を感じるセンサーにも狂いが出ます。その結果、熱中症の患者は実際には寒くないのに寒気を感じたり暑いのに涼しく感じたりすることがあります。暑さや寒さは、実際に暑いとか寒いとかとは関係なく、脳が認識すればそう感じます。熱中症で搬送されるご老人は大抵寒気がするので気温が高いにもかかわらず冬物などを着込んでいらっしゃるのはそのためです。

超撥水ナノテクノロジーの生みの親
蓮っ葉なようでいて、泥より出でて泥に染まらない

2013.06.24

北宋の儒学者、周茂叔の述べた『愛蓮説』の一節に 「蓮は泥より出でて泥に染まらず」とあるように、蓮は泥の多い池や沼を好んで生育しています。しかしその葉や花は泥で汚れることはなく、きれいな状態を保っています。葉の表面についた水は表面張力によって水銀のように丸まって水滴となり、泥やその他の異物を絡め取りながら転がり落ち、自浄効果を発揮しているのです。この強い撥水性は葉の表面の微細な突起構造によるもので、ロータス(蓮)効果として知られています。ナノテクノロジーの分野では、塗料、屋根材、布などの表面でロータス効果を再現し、超撥水性を実現しています。台風4号の置き土産の雨水です。 今日は休診日。梅雨の晴れ間で清々しい朝です。

万葉の草が福島原発の水漏れを
身近な植物チガヤの素性

2013.06.07

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熱帯から温帯に分布して「世界最強の雑草」とよばれているチガヤ。葉や茎には、スコポリン、クロロゲン酸などの物質を含み、これらの物質が他の植物の生長を抑制する、いわゆるアレロパシーを示します。このような群生が見られるゆえんです。(過去にセイタカアワダチソウのアレロパシーについてUpしてあります。2011年の日記をご覧くださいLinkIcon)地下にしっかりした匍匐茎を伸ばし、駆除がやっかいな雑草ですが日常生活のさまざまなシーンに登場してきました。そのため古くから親しまれ、古名はチ(茅)であり、花穂はチバナまたはツバナとも呼ばれ、古事記や万葉集にもその名が出ているのは驚きです。またチガヤはサトウキビと近縁で、植物体にショ糖を蓄える性質を持っています。若い穂は、噛むと甘く、子供がおやつ代わりに噛んでいたようで、万葉集にも穂を噛む記述があります。茎葉は乾燥させて屋根を葺くのに用い、成熟した穂は火打石から火花を飛ばし火種(ひだね)、つまり着火剤に使われました。さらに、花穂を乾燥させたものは強壮剤、根茎は茅根(ぼうこん)と呼ばれて利尿剤に用いられました。また、ちまき(粽)は現在では笹の葉に包みますが、本来はこのチガヤで巻いた「茅巻き」で、それが名の由来とも言われています。最近の話題では、チガヤの地下茎から出る鋭い芽が塩化ビニール製のホースを貫通して福島第一原発の水漏れの原因になったことが報道されていました。
何も知らない十兵衛と零子は群生に鼻を突っ込み、綿毛を吸い込んで、二頭とも激しいクシャミをしていました。梅雨の中休み、のどかな朝。安田は63回目の誕生日を迎えました。出来ることならチガヤのようにたくましく生きたいものです。今後ともよろしくお願いいたします。

藤房の丈を競へるやさしさよ
九尺藤は丹波の白毫寺

2013.05.17

今年初めての夏日となった五月晴れの日、丹波屈指の古刹、九尺藤で有名な天台宗白毫寺を訪れました。見頃が過ぎているのではないかと気掛りでしたが、むしろ人出が少なく120mにも及ぶ藤棚をゆっくり楽しむことができました。日舞の藤娘、源氏物語の藤壷など、藤の花は日本文化の主役としてさまざまな場面に顔を出します。古事記、万葉集、枕草子、徒然草など古典に何度も登場するためか、藤の花を見ると いにしえに誘われるような気がしますね。
「藤房の丈を競へるやさしさよ」・・・本来嫉妬や争いの火種になる「競ふ」という心理には優しさはないはずです。藤の房の「丈を競ふ」と見立て、それでも藤らしい「やさしさ」が少しも損なわれるものではないことを「やさしさよ」という詠嘆で結んだ現代俳句です。

水島、一緒に日本に帰ろうよ!
ビルマと言えばこれ・・・

2013.04.09

日本人がミャンマーと聞いて想像するのはビルマの竪琴、スーチーさん、軍事政権の3つだけ!とのこと。第二次世界大戦末期のビルマの日本軍収容所の鉄条網の中、兵隊たちは竪琴を携えて降伏説得の使者として赴き、行方不明となってしまった水島上等兵の安否を気遣っていました。そんな彼らの前に、水島によく似た僧が現れます。彼は、肩に青いインコを留らせていました。隊員は思わずその僧を呼び止めましたが、僧は無言のまま、逃げるように立ち去って行きました。大体の事情を推察した隊長は、物売りの老婆から、一羽のインコを譲り受けます。そのインコは、例の僧が肩に乗せていたインコの弟に当たる鳥でした。身分正体を明らかにしない水島に対し、隊員たちはインコに「オーイ、ミズシマ、イッショニ、ニッポンヘカエロウヨ」と日本語を覚えこませ、気持ちを伝えようとしたのです。「ビルマの竪琴」は竹山道雄の作品で昭和22年3月から翌年にかけて、児童向け雑誌「赤とんぼ」に掲載されました。
ところで、出家し、僧になった主人公の水島上等兵が竪琴を奏でる場面がありますが、ビルマ現地の小乗仏教では、出家者(僧侶)は、戒律により歌舞音曲、つまり竪琴の演奏などは禁じられていますし、生き物をペットとして携えることも考えられません。文化考証の詰めがちょっとあまいかな・・? ともあれ、小学校の副読本を読み、心に迫るものを安田少年が感じていたことだけは間違いありません。
お顔にタナカを丹念に塗りこんだこの美しいお嬢さん、カメラ目線で、ミャンマーの女性にはめずらしく人馴れしていました。


パガンの落日
ユネスコの世界遺産になりきれなかった仏教遺跡群

2013.04.09

ミャンマーのパガンに行ってきました。イラワジ川左岸の40平方キロメートルの広大な土地に残る2000以上のパゴダと寺院の遺跡が有名で、カンボジアのアンコールワット、インドネシアのポロブドールと共に世界三大仏教遺跡と呼ばれています。しかしこれをユネスコの世界遺産として登録しようとする試みは失敗に終わりました。元来の建築様式を無視し、鉄の補強材で補修を加えたり、元のものとは似つかない近代的な建材を使用し、遺跡のストゥーパ、寺院、建造物に無計画かつ、ずさんな修復をしてしまいました。さらに軍事政権がゴルフコース、舗装された高速道路を建設したり、高さ61mの似つかわしくない展望台を建ててしまったためです。とは言え、夕日に染まるパゴダ群は圧巻でした。乾季も終わりに近づき、カラカラに乾ききった大地から舞い上がる砂塵のベールを透してみる夕日は日本で見る落日とは色調がまるで違いました。空の色も夕焼けではなく、迫り来る夜の帳も藤色でした。


ドッペルゲンガー現象
今年の横浜@赤レンガ倉庫で思ったこと

2013.02.07

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今年も獣医内科学アカデミー出席のため横浜にやってきました。恒例になった早朝の赤レンガ倉庫周辺のウォーキング中、最近、影の写真ばかり撮ってる・・・と友人の獣医さんに言われました。自身の影が薄くなったせいじゃない?と茶化しておきましたが、影は夢や想像に現れる死者のイメージがあり、肉体に宿る魂に付随する第二の魂とも考えられています。影ははかない魂であり、自分自身で自分の影を見ることは、死を目前にしていることを意味していると捉える文化もあります。こうした自分自身の姿を見ているような感覚は自己視、体脱体験あるいは臨死体験などと呼ばれています。自己視は身体から魂が離脱することを意味し、「二重身(ドッペルゲンガー)」の現象ともいわれ、死期が近い人がドッペルゲンガーを見るという事から、「ドッペルゲンガーを見ると死期が近い」という民間伝承が生まれたと考えられます。著名人ではエイブラハム・リンカーンや芥川龍之介、帝政ロシアのエカテリーナ2世等が、自身のドッペルゲンガーを見たという記録が残っています。研究によると、脳の側頭葉と頭頂葉の境界領域(側頭頭頂接合部)に脳腫瘍ができた患者がドッペルゲンガーを見るケースが多いということです。この脳の領域は、ボディーイメージを司ると考えられており、機能が損なわれると、自分の肉体を認識する感覚が障害され、まるで肉体とは別の「もう一人の自分」が存在するかのように錯覚することがあると言われています。さらに脳腫瘍に限らず、偏頭痛の発生原因とされている脳内の血流の変動による脳の機能の低下によっても引き起こされるそうです。実際、リンカーンや芥川龍之介もヒドイ偏頭痛持ちであったことは有名ですね。まあ、いずれにしてもあまり体験したくない現象ではあります。赤レンガ広場を歩きながらそんなことを考えていました。

第三回兵庫県開業獣医師会臨床研究会
舞子ビラホテルで開催されました

2013.02.17

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院長がお世話させていただいている兵庫県開業獣医師会の研究会が舞子ビラホテルで盛大に開催されました。当院からは4題の発表をおこない、築澤寿栄獣医師(写真右から2人目)の演題「肉芽腫性病変組織を用いたRT-PCRにより非滲出型猫伝染性腹膜炎と診断し得た猫の1例」他3名の先生が優秀演題として表彰されました。


菜の花畠に入日薄れ
武庫川河川敷のコスモス畑はいつの間にか菜の花に

2013.02.15

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おぼろ月夜         作詞 高野辰之
一、
 菜の花畠に、入日薄れ、
 見わたす山の端(は)、霞ふかし。
 春風そよふく、空を見れば、
 夕月かかりて、にほひ淡し。

二、
 里曲(さとわ)の火影(ほかげ)も、森の色も、      *さとわ:人里のあるあたり
 田中の小路をたどる人も、
 蛙(かはづ)のなくねも、かねの音も、
 さながら霞める朧月夜。

大正3年『尋常小学唱歌 六年生用』に登場して以来、現在も掲載されています。歌詩は1番2番とも脚韻が踏まれており、特に2番の「も」音の繰り返しが音楽的であると評価されています。初めの2行に視覚的描写を置き、第3行で聴覚に言及し、最後の1行で締める漢詩で用いられる起承転結の手法でまとめています。
菜の花は身近な草花でこの季節を表す様々な言葉に取り入れられています。菜種梅雨、菜種月(おぼろ月)、炒り玉子を菜の花にみたてた「菜種あえ」など。でもそのものを辛子醤油で食べる菜の花のお浸しがやはり最高ですね。


今年の福娘さんはこの方!
宵えびすに行ってきました

2013.1.09

今年の十日えびすは強い寒気がやってくるとのことで、九日の宵えびすに詣でました。夕刻までは賑わっていたとのことでしたが、お参りした10時前には人出はまばらで、例年入場制限をしている南大門もガラガラ。スタッフの集合記念撮影もできました。福笹をいただいた今年の福娘さんはこの方です。ところで毎年、写真中央に仁王立ちで写る神主さん姿の社務所の男性はひょっとしてボディーガード?写真を撮ろうとすると必ず割って入る・・と感じるのは私だけ?


こんにゃくゼリーの20倍危険!
日本人なら周知の事実 自己責任でお召し上がりください

2013.01.01

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日本では、平安時代から朝廷が稲作信仰を推奨してきました。これが現在でも受け継がれ、正月などのハレの日の行事には欠かせない縁起物の食材となっているお餅。こんがりキツネ色に焼き色がつくと思わず笑みがこぼれます。しかし唾液の分泌量が減って、嚥下力も詰まった時吐き出す力も弱っているお年寄りにとっては危険な食物です。1億人が食べた際、7.6人の窒息死が起こり、蒟蒻ゼリー(0.33人)の死亡率をはるかに上回っています。しかし蒟蒻ゼリーのような規制が行われないのは、伝統食である餅が窒息リスクのある危険な食べ物であることは常識として広く周知されており、餅による窒息事故は消費者の自己責任と捉えられているからです。お餅は小さく少量にわけ、口の中を十分に湿らせていただきましょう。